Song for

zine "Scenery"

茨城から岩手へ、国道6号線を車で北上していた。その日、僕は初めてある有名な区間を通ることになる。

巨大なフットボール・スタジアム前を通過。ロードサイドの店舗という店舗は営業を停止している。

 

店舗入り口のバリケードを見るまで、僕はその区域に進入したことに気がつかなかった。この区域には人が住めない。急いでスマートフォンの検索窓に「6号線 通行 一般車両」と入力すると、どうやらこのまま通行できるようだった。3年半前からその区域の一般車両の通行が可能になったらしい。僕は窓を閉め、エアコンを車内循環にした。車のガソリンは残り1/4を切っていた。

 

この区域には人が住んでいない、とはどの程度いないのか。次のガソリンスタンドまで何キロあるだろうか。

 

夕方、というにはまだ明るかった。べとつく手で振動を握りこみ、どこかで曲がって戻ろうかと思うが、あたりの信号は全て黄色く点滅し、交差点は直進のみが許されている。建物も脇道もバリケードで塞がれて、全てが立ち入り禁止の6号線一本道。車内に流れるラジオの音だけが大きくなっていく。後悔していた。時おり通る対向車に人が乗ってることが救いだ。そう思うくらいにナーバスになっていた。

結局、Uターンして給油することにしたのだが、再びその区域に入るころには既に暗くなってしまっていた。周囲の放射線量を告げる赤い電光掲示板は先ほどよりも眩しく見えた。脇道を塞ぐバリケードには、工事現場で使う見慣れた電飾がチカチカと点滅している。夜の闇が人のいない民家を違和感ごと消してくれていた。広がる杉林はのっぺりした輪郭を残し、空虚な奥行きを見えなくしていた。確かに人はいないが、日中よりも恐怖はなかった。歩行者のいない田舎の国道なんてありふれている。車窓に流れる夜の風景は、ここが人が消えた町であってもそれと大差なく思えた。

その翌日、はじめて尾崎森平と会った。


文:大滝(crevasse

尾崎 森平 Shinpey Ozaki

1987年仙台市生まれ。現代の東北の景色から立ち現れる神話や歴史的事象との共振を描く。2016年「VOCA 2016 現代美術の展望ー新しい平面の作家たち 」大原美術館賞 。平成27年度 岩手県美術選奨。

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